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安らぎの椅子のできるまで

良工房の最近取り組んでいる試み、『安らぎの椅子』。クッションと木の融合したこのシリーズを作るきっかけになったのは、ご主人が脳梗塞で体調を崩されて、自宅にいらっしゃる時間が長くなったので、一日中座っていても疲れないリラックスチェアを、というお客様のご要望でした。
従来の無垢材を使用した椅子にも試座していただきましたが、お客様が今まで慣れ親しんでいたクッション座面を使用して欲しいという強いご希望を受けて、今までに作ったことのない、木とクッションの融合した彫刻家具を目指し、『安らぎの椅子』の製作はスタートしました。

彫刻家具の有機的な形にに合わせてクッションを張ってくれるのはあの人しかいない…。そう考えた私たちはある方のもとを訪ねました。『世界でいちばん優しい椅子』の著者であり、家具モデラーの宮本茂紀先生(写真左)です。

宮本茂紀(みやもと・しげき)/家具モデラー。1937年東京生まれ。芝家具の流れを汲む椅子張り職人として修行を積む。1966年五反田製作所を創業。1983年五反田製作所の分社としてミネルバ設立。イタリア、スウェーデン、スペイン、ドイツの工場で研修を受け、世界的な技術を修得。国内外トップブランド家具のライセンス生産をはじめ、試作開発、迎賓館や白洲次郎の椅子など歴史的価値のある椅子の修復、宮内庁の儀装馬車の修復や家具の製造のほか、日本初のモデラーとして時代を代表するデザイナーの椅子の製作を手がける。2007年黄綬褒賞受賞。
五反田製作所 https://www.gotanda.co.jp/halcana/

宮本先生は、私たちの相談に快く応じてくださり、早速製作が始まりました。写真は試作の第一号です。この時はまだ木の部分とクッションの部分を別々に作って乗せた形になっています。

その後はお客様に試座していただきながら、五反田製作所に通い、形を改良していきました。
より彫刻家具としての統一感が出るように、クッションも取り外し型から張り込み型に変更しました。
座面は中を抜いてゴムを張り、その上にクッションを張り込んでいただきました。
クッションの厚さ、張り込む溝の幅や深さ、曲面に張る方法…。何度も試作を重ねて『安らぎの椅子』は完成しました。

こうして完成した『安らぎの椅子』はお客様にも大変喜んでいただき、現在では良工房の定番の一つとして人気の作品となっています。

腰の部分ををサポートするように少し出していたり、肩、背中、腰、座面とクッションの硬さを少しづつ変えたりするなど、長時間座っていただくための工夫が各所にされています。

同じ手法でベンチも制作しています。

安らぎの椅子シリーズは基本的には受注生産になりますので、お客様の用途、体型などに合わせて製作させていただきます。
生地も革張りや柄物などサンプルの中からお選びいただけますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。